『鎮魂歌』





「ねえねえ、晩飯の買い物付き合ってくれない?」

 ゲームをしながらわたしのお誘いに、元々鋭い目をさらに鋭くするシン。

 この表情をする時のシンは怒っているということを、短いながらの共同生活でわたしは理解している。



「それは勝ったらとか関係なくか?」

「関係なく」

「今日はアンタがご飯当番だったのは、オレの気のせいだったか?」

 言葉の端々に入る、皮肉。

 間違いないやっぱり怒ってる



「そこを分かってお願いしてるんだよ〜」

 ゲームで勝利を収めたわたしはシンを見やる。

 わたしとしてもいい加減にシンのこの態度には慣れてきてるので、向けられる怒気をあっさりと受け流す。



「で、なんだよ?」

 この世界に来た当初のシンだったらキレて、部屋に戻ってただろうけど、今はちゃんと理由を話せばそれなりに返してくれる。

 これもわたしやかがみ、みゆきさんの躾の賜物である

 まあ、今回はまっとうな理由だしシンも簡単に頷くはず。



「今日はお母さんの誕生日なんだよ〜そして明日はお父さんの誕生日

 だから今晩はまとめてやるから、豪華なディナーにしようと思ってね☆」

「…………」

 ノリノリでポーズを取ったわたしとは対照的に、シンはさっきよりも冷ややかな瞳となる。

 なんで?



 そしてシンは立ち上がり無言でゲームの電源を落とす。

「ってなにすんの!?」

「ホントに、アンタは分かってないよな!」



 わたしの方に振り返ると同時にそう言い放つシン。

 なぜかわたしはシンにキレられてしまったのだ。





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