『鎮魂歌』
1
「ねえねえ、晩飯の買い物付き合ってくれない?」
ゲームをしながらわたしのお誘いに、元々鋭い目をさらに鋭くするシン。
この表情をする時のシンは怒っているということを、短いながらの共同生活でわたしは理解している。
「それは勝ったらとか関係なくか?」
「関係なく」
「今日はアンタがご飯当番だったのは、オレの気のせいだったか?」
言葉の端々に入る、皮肉。
間違いないやっぱり怒ってる
「そこを分かってお願いしてるんだよ〜」
ゲームで勝利を収めたわたしはシンを見やる。
わたしとしてもいい加減にシンのこの態度には慣れてきてるので、向けられる怒気をあっさりと受け流す。
「で、なんだよ?」
この世界に来た当初のシンだったらキレて、部屋に戻ってただろうけど、今はちゃんと理由を話せばそれなりに返してくれる。
これもわたしやかがみ、みゆきさんの躾の賜物である
まあ、今回はまっとうな理由だしシンも簡単に頷くはず。
「今日はお母さんの誕生日なんだよ〜そして明日はお父さんの誕生日
だから今晩はまとめてやるから、豪華なディナーにしようと思ってね☆」
「…………」
ノリノリでポーズを取ったわたしとは対照的に、シンはさっきよりも冷ややかな瞳となる。
なんで?
そしてシンは立ち上がり無言でゲームの電源を落とす。
「ってなにすんの!?」
「ホントに、アンタは分かってないよな!」
わたしの方に振り返ると同時にそう言い放つシン。
なぜかわたしはシンにキレられてしまったのだ。