こなたは何事においても楽しさを優先するやつだ。

 そしてそれは決して自分だけじゃなく、周りも楽しんでほしいように行動する。

 だけどそれをあまり口に出しては言わない。だからただの思いつきとしか思えない時がある。

 そこが腹立たしいところだし



「その格好、本当に、本当はオレの為なのか………?」

「……一応、そだよ………」

 そこが可愛いところだ



「オレはてっきりいつもみたいに、からかってるかと………」

「そんなからかいだけで、こんな格好できるわけないじゃん………」

 付き合って1年半ほどになるけど、オレとこなたは一線を越えていない。

 こなたがまだそういうことに対して怖がってるとこがあるし、オレも無理にとは思わなかった。

 だからこなたがこんな格好をした時点でオレは気付いてやらないといけなかったんだ



「なんか反応したら、お前の思い通りと思ってムキになっちゃってごめん………」

「えっ? どういうこと?」

 いつもとは違う純真無垢な瞳でこっちを見てくるこなた。

 ゲームでは数々の恋愛をクリアしてきたこなただけど、現実世界になるとそのキレは悪い。

 このままだと誤解したままだし、やっぱり全部言わなきゃならないのか………



「こなたがオレの為にその格好をしてくれたんなら嬉しいし、その格好はやっぱり…反則だ…かわいい」

「う、そ………」

 クソ恥ずかしい台詞は一応、恥ずかしがってる滅多に見られない『彼女』を見られたという事で吐いた価値はあった。

 でも最初はしぶしぶ作ってたケーキ作りも、こなたとやってたら楽しくなってきた事は言わないでおく、オレにだって意地がある。



「なんか、そう面と向って言われると、照れるね………」

 そう言ってこなたは後ろで手を合わせて、恥ずかしそうにモジモジしだす。

 普段が普段だけにこういうところを見せられると、やっぱり心を奪われてしまう。抱きしめたくもなる。



「でもやっぱりシンってロリコンなんだね☆」

 しおらしいのはまさに刹那、あっという間にいつものこなたになる。

 あまりの速さに怒りすら湧いてくる。



「じゃあもう押し倒しても変わらないって事だな」

「い、いや、それはまだ、リアルひぎぃはノーセンキュなんで………」

 後ずさるこなた。だったら挑発するなと言いたい。

 オレだって軽口で我慢してるけど、結構限界の時だってあるんだから。

 オレはエプロンの紐をきつく締める。



「続き、始めるぞ」

「ほーい」



 一転してこっちに無警戒に寄ってくるこなた。

 今はこれでそれなりに満足はしている。





〜 F i n 〜   






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