『月』
1
ライフワークの深夜アニメ視聴が終わり、わたしはこの次やることを考える。
明日は普通に学校。
ただ今夜は少しだけネットゲでさまよい歩きたい。
しかしそれをすれば確実に寝坊し、つい最近我が家に居候をしだした少年の怒りをかうことになる。
「どうすべきか?」
誰も見ていないのに手をマンダムの仕草をして考え込む。
「ん?」
部屋を出たわたしはその同居人、シンの部屋が空いていることに気付く。
彼はああ見えても軍人だから基本的に生活は規則正しい。
別にそれは結構なんだけど、わたしにまで強要してくるのはノーサンキューなんだけど
取りあえずシンがこの時間に起きているのは珍しい。
ただドアの音がしなかったので、いるとすれば、浴室か
さもなくば―――
「いた」
シンを見つけたのは上のベランダだった。
シンはベランダで上を、空を、月を見ていた。
幸い満月だから、シンの表情は良く読めた。
無表情
でもそれが逆に哀しさを出しており、実際にシンはそんな感じになっているんだろう。
だからわたしはそんなシンに声を掛けれなかった。
月。
シンがいた元の世界の最後の場所。
でも今のわたし達の世界の月にはなにもない。
せいぜいユニオンフラッグが立ってる程度。
名前と見た目が一緒。それ以外は全然別物。
それを見てシンは何を思ってるんだろう?