『月』





 ライフワークの深夜アニメ視聴が終わり、わたしはこの次やることを考える。

 明日は普通に学校。

 ただ今夜は少しだけネットゲでさまよい歩きたい。

 しかしそれをすれば確実に寝坊し、つい最近我が家に居候をしだした少年の怒りをかうことになる。



「どうすべきか?」

 誰も見ていないのに手をマンダムの仕草をして考え込む。

「ん?」

 部屋を出たわたしはその同居人、シンの部屋が空いていることに気付く。

 彼はああ見えても軍人だから基本的に生活は規則正しい。

 別にそれは結構なんだけど、わたしにまで強要してくるのはノーサンキューなんだけど



 取りあえずシンがこの時間に起きているのは珍しい。

 ただドアの音がしなかったので、いるとすれば、浴室か

 さもなくば―――



「いた」

 シンを見つけたのは上のベランダだった。

 シンはベランダで上を、空を、月を見ていた。

 幸い満月だから、シンの表情は良く読めた。



 無表情



 でもそれが逆に哀しさを出しており、実際にシンはそんな感じになっているんだろう。

 だからわたしはそんなシンに声を掛けれなかった。



 月。



 シンがいた元の世界の最後の場所。

 でも今のわたし達の世界の月にはなにもない。

 せいぜいユニオンフラッグが立ってる程度。

 名前と見た目が一緒。それ以外は全然別物。



 それを見てシンは何を思ってるんだろう?





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