「遠慮なんかするわけないじゃん、だってシンだよ?」

「すっごく引っかかる言い方なのは気のせいだよな?」

「気のせい、気のせい」



 この家には他にもお父さんとゆーちゃんがいるけど、わたしとシンは一緒に住んでる。

 そんな一種の家族みたいな状態で、遠慮するってのは難しい。

 だって朝も昼も夜も顔を合わせてるんだよ

 でもこのG.W.の間、わたしとシンはほとんど一緒にいれなかった。

 別にそれで親友たちを恨む気持ちなんてのは全くない。

 逆に改めてわかった。



 シンがいない生活の寂しさを。

 私の中でシンがどんな存在なのかを。



 シンとどこに行こうかって考えは気づいたら、シンとどうやって一日を過ごすかに変わっていた。

 そして今、私はシンの鼓動と暖かさが背中越しに伝わってくる。

 誰よりも私が一番シンを感じれたんだ! って言い切れるくらいに。





「さて、後は塗装だけだな。キリもいいし終わるか」

 シンの言葉に時計を見ると、もう五時を回っていた。

 経過した時間が嘘ではないのは、漫画の山がわたしの右から左に移動していることが証明していた。

 楽しい時間が一瞬ってのはホントだね。

 少し、いやかなり、名残惜しい。

 シンもそう思ってるのかな?

 シンもまた立ち上がらずに私に背を預けてる。



「今日、ゆたかが帰って来るんだよな?」

「うん、夕食には戻るって」

 少しだけ沈黙、シンは言葉を探してるし、私はシンの次の言葉を待ってる。



「じゃあ、ごちそうを作るか」

「だね! たまには二人でご飯作ろっか?」

 見えないけどシンが頷いた、気がした。

 そして私達は同時に立ち上がる。



「悪くなかった」

 シンからそれを聞けただけでも、私はそれがすっごく嬉しい。

「わたしもだよ」

 だから、私も、きっとシンが聞きたかった答えを返した。





 さて、来年のG.W.は何しよっか?





〜 f i n 〜   






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