1025キリ番リクエスト作品



『変わるもの、変わらないもの』





 膨大ともいえる夏休みの宿題に一段落が付いたオレは、リビングへと向かう。

 今年オレは受験生。それなのに去年と同じ量の宿題を課すなんておかしいとしか思えない。

 とはいってもオレは学校に行かせてもらってる身だから、ある程度は宿題を真面目にこなさなければならない。

 全く居候とはつらいもんだ。……ってオレほど恵まれてる居候もいないな

 1人で苦笑を浮かべ、リビングに入る。





「暑くないか?」

 真っ先に目に飛び込んできたのは床に突っ伏してる青色の物体。

 返事はない、どうやら暑さで屍と化してるようだ。

 オレは無視して腰を下ろすとテレビを付けた。



「エアコン、付けたらいいだろうが!?」

 少ししてから、オレは『屍』を怒鳴りつける。

 はっきり言ってうざったいこの上ない。

 しかし相変わらず『屍』は動かない。

 こうなったら根気がないのはオレの方。しぶしぶエアコンのリモコンを手に取る。



「あれっ?」

 しかしどうした事か、起動ボタンを押してもエアコンはウンともスンとも言わない。

 昨日はちゃんと付いていたし、故障とは考えにくい。

 とすると

「電池切れか………、!」

 呟くオレに一体いつの間にだろうか、仰向けになった『屍』が目を合わせてくる。

「……シン、電池、取ってきて………」



 その瞳はいかにも、これ以上暑くなったら死んでしまうという薄幸の美少女のもの。

 だけどオレは知ってる

 こいつは病弱でもなんでもなく、ただ暑さでグダってるだけという事を

 そしてその系統の瞳に自分が物凄く弱いという事を



「クソッ、分かったよ!」

 オレは一言吼えると、電池の替えをキッチンに取りに行った。



「性格が絶対歪んでるな、あいつは!!」

 オレの弱点を知ってそれを労わるどころか、利用してくる。

 世が世だったら、世界が違えば、オレなんかよりさぞかしスーパーエースといえる存在になっていただろう。



 全く腹立たしい



「絶対にあいつには宿題を見せないからな!」

 口元から笑みがこぼれる。



 ただこの怒りは不快なものとは全く違うものだ





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