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「ほほお〜」
「まだ作りかけだけどな」
家から帰ってきたわたしは、シンの部屋でジオラマを見て思わず感嘆の声を上げる。
シンは作りかけとは言っているけど、ちゃんとそれっぽく見える。
ガンプラの方も、荒かった画像で見るよりももっとちゃんとできていた。……ってか塗装うまい、さすがザフトレッドというべきか
「後、これな」
そしてシンはわたしにガンプラのフリーダムの説明書を渡す。
「言っとくけど見てないからな! だから証拠に持っとけ!」
確かに説明書は綺麗で開かれた形跡がない。どうやら律儀にもインパルスの時の約束を守ってるようだ。
さすがシン、約束とかに弱い
でもこれでシンの世界が、わたしの世界のところではアニメとして放映されているのを知られる可能性は少なくなる。
もし知ったら、今のシンだったらカミーユ状態に成りかねない。もちろんTV版の。
「結局なんだかんだで気に入ったんじゃないの〜?」
「まあな」
おや? 予想と違う返しだ。
ぶっきらぼうに違いないけど言葉がいつもみたいに鋭くない。
よっぽどガンプラがお気に召したのだろうか?
「ふっふっふっふっふ、まだまだ甘いな」
「誰だ!?」
「いや、お父さんしかいないじゃん」
ドアに寄りかかってポーズを決めてるお父さん、口にやすりを咥えるのはどうかと
ってかシンなんかノリまで良くなってる気が………
「確かに見事だ。だが君はまだガンプラの真髄を知らん!
教えてやろう、フルスクラッチを」
「フルスクラッチってレベル高っ!?」
わたしがあんまり作る方に興味なかったからな〜
お父さん教えたかったんだな、そういうの
「そうじろうさん、教えてください!」
「よし、なら書斎に来い! 我が秘伝授けようぞ!」
そして二人はわたしを置いて風のように去っていった。
ん?
あれ?
なぜにお父さんがシンとの仲良しフラグ回収してんの?
そういうのって普通わたしじゃん? シンに話しかけてんのもほぼわたしなのに
しかもシン、わたしがいない間になんでか機嫌いいし、わたしの努力は無駄ッ! 無駄ッ! か!
「なるほど」
どうやら私はシン・アスカを、ただのかませとしか見ていなかったようだ。
認めよう、私がここまで攻略しようと思ったのは君が始めてだ
「絶対に作ってやるフラグを! そう! シンをゆる〜くするフラグをわたしが!」
私は小さくなった彼の愛機にそう宣言した
〜 f i n 〜