『作って遊ぼう』
1
最近わたしの朝食は三人で食べるようになった。
わたしが物心ついた時から、お父さんと二人だけの朝食がほとんどだったのに。
人数が増えた理由は、お父さんが再婚したとかいうわけではない。
「おはよ〜シン」
「ああ」
わたしの挨拶に、無愛想極まりない返事をした少年こそがその原因。
しかもこの少年、シン・アスカはいきなり次元を越えて我が家に来たのだから、これはもう事件なんてのを天元突破してしまうレベル。
「いつも悪いね」
「いえ、ここにいさせてもらってるんですから、それくらいはしないと」
わたしの時と違って、お父さんには少し表情を緩めて返事をするシン。
どうやらシンはお父さんにはそれなりに敬意を表しているみたいだけど、なぜかは不明、ぶっちゃけ変わってると思う。
「シンってさ」
わたしの言葉に相槌を打つことなく、朝食を口に運ぶシン。
さすがにフラグを回収していないだけのことはある。といってもフラグを回収してシンが話に乗ってくる姿が全く想像できない。
「ニートだよね」
ブヒュ!
やはり聞こえてはいたらしく、牛乳を華麗に放物線に吐き出すシン。
「なっ、なっ、おまっ!」
わたしと吹いた牛乳を交互に見つめ、取り合えず拭き取る方を選択するシン。結構律儀である。
「だってさーわたしが学校行ってる間、なにもしてないじゃん」
「いや、俺の手伝いをしてくれてるし………」
「オレは帰る方法を探してるんだ!!」
お父さんのフォローを食い気味に大声で反論するシン。
「でもそういう系統の本って、ここに来た当初から読んでたじゃん」
シン曰くわたしたちの世界の科学技術はかなり低いらしい。
まあMSが実用化されてるシンの世界と比べたらそうなんだろうけど。
「だから今は自分で理論を考えてるんだろうが!」
そう言っているものの、シンは科学者ではない、あくまでも本業はMSパイロット。
それはさすがに無理っぽい気がする。
「それって世間一般でニートって呼ぶんじゃないの?」
「言わないだろ! ねえそうじろうさん」
しかし擁護を期待したシンにお父さんはあごに手を乗せ
「ふ〜む、元ガンダム乗りのニートか………」
そしてわたしとお父さんの目が合う。
『月は出ているか!?』
「黙れよ!」
まあ綴り違うけど
とはいえこれ以上シンをからかうと、そろそろ本気でキレそうになるから、わたしは本題を出す。
そう『シン・アスカをゆる〜くする計画』に基づいて
「いやいやニートがよくないって言ってるんじゃないよ、わたしは息抜きしたらって言いたいんだよ
シンほとんど机に向きっぱなしじゃん」
「確かに、体は丈夫かもしれないけど、そんなんじゃ心がまいってしまうよ」
「……そんなこといってもな」
シンも自覚はあるのか、それとも煮詰まってるからか、反論もせずにそれっきり黙ってしまった。