「どうだ? 凄かっただろ?」

 小さな丘でバイクから降り、オレはこなたに尋ねる。



「うん、スリルあったね! いつゆい姉さんに捕まるかって」

「そっちかよ!」



 まあ確かに見つかったらかなりやばい速度だったけど………

 でもこなたもインカムからの反応と、今の顔を見たら、それなりに楽しんでくれたみたいだったし



「これがオレからの彼氏としての誕生日プレゼントだ」

「うん、そうだね〜四十二点!」

「低っ!?」

「だってこれただのドライブじゃん」

「うっ! まあそうだけど………」

 さすがにこなたも女の子、ロマンや雰囲気とかでは騙せないらしい

 とはいえ、結構オレなりに考えたんだけどな



「でもさこのインカム、この為に買ったんでしょ?」

 これがいつもみたいにからかった顔で言ってきたなら、簡単に切り返せたんだけど

「べ、別にこ、これからも、い、い、いるしな!」

 そんな風に純粋な微笑を見せられたら、こっちとしては直視できない



「それに、このスーツ、私用に買ってくれたんだ………」

「い、今、あるやつだと、サイズが合わなかったからな!」

 完全に言葉をどもらすオレ

 でもそんなオレをこなたはからかいもせず、ただ見ている

 

「ありがと、シン」

 ギャップが大事とは良くいったもんだ

 身長のせいもあるからか、オレを見上げてくるこなたのその姿はとても愛くるしい。

 オレは完全にこなたの女の子の顔に骨抜きにされていた。



「でもこれもサイズ合ってな〜い」

 抱きしめようとしたオレを止めたのは、こなたのあのいつものユル〜イ顔。

 そう! オレをゲームでフルボッコにした時の顔だ!



 からかってる! こいつは絶対にオレをからかってる!



「だからさ」

 オレの胸に飛び込んできたこなたの顔は



「罰として、朝日見よ、ここでこのまま」



 これはズルイ

 勝手にしろ



 2つの思いが同時に浮かぶ。

 結局オレはどっちのこなたにも振り回されるんだな

 でもそれは別に嫌いじゃない、というかむしろ望ましいこと、かもしれない



「シン、返事」



 オレは言葉を返すことなく、年上になった彼女を抱きしめた。





〜 F i n 〜   






戻る        別の日常を見る