「おっかえりー」

 二階からはいつも通り弾んだ声が出迎えてくる。

 この様子だと修羅場は見なくて済んだってことか………



「ってかメール返してよ」

 すべる様に降りてきて、文句をつけてくる妻のこなた。

 そしてその姿に唖然とさせられる。



「どう? この格好?」

 くるりと一回転して、芝居がかった様子で帽子を取る。

 俺はもちろん言葉もない



「感想は?」

「何してるんだあんたは?」

 頭痛がしてくる頭を抑えながら、私服とはとてもいえない赤と白の服を着ている妻に尋ねる。



「いやー久しぶりに着てみようってね☆ こりゃまだまだ現役でいけるね、私も」

 その服を着てバイトしていた数年前から全く変わらない容姿で、戯言をほざくこなた。

 というか、どこにあったんだこれ?

 よく見ると、多少くたびれて、まるで今出してきたような



「なあ、こなたひょっとして………」

 イマイチ考えたくない予想が頭の中に浮かんでくる。

 そしてこなたは俺の脳内を見たかのように、頷き



「そう、シンを驚かせようと急遽閃いたんだけどね

 いやーメールが返ってこなくてあせった、あせった」

 ほがらかにそしてあっさりと白状しやがった。



 悶々とした俺のやり場をどこへもって行こうか

 いや、そんなのは聞くだけナンセンスだ



「なんでぇぇぇぇぇぇ!?」

 俺は目の前のサンタにぐりぐりをかます。

 正直これでも全然足りない



「あたたっ、分かったよ、脱げばいいんでしょ、脱げば」

 唇をとがらせながら、痛むであろうこめかみを抑えるこなた。



 普通いきなりサンタのコスチュームで出迎えようと思うか?

 そんなに俺を驚かしたかったのか、と聞くと、間違いなくこなたは頷く。

 残念ながら俺の妻はそういうやつだ。



 おかげで



「別にいい、着てて」

「へっ?」

「に、似合ってるし、別にいいぞ、今日くらいはそれで………」

 呆けた表情をしてたこなただったけど、すぐに鬼の首を取ったかのような顔になる。

 くそっ、こんなに勝ち誇った顔を見せられて、腹が立たない自分に腹が立ってくる。



「じゃあ、パーティを始めようか!」

 そしてこなたは俺の手を繋ぎぐいぐいと、引っ張っていく。

 振り回されてるのはいつも俺の方だ



 だから



「あっ、トナカイのコスあるけどシン着る?」

「絶対着ない!」



 退屈なんて絶対しない





〜 F i n 〜   






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