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「やっと終わった〜」
「こなた、お疲れ〜!」
バイトが終わってノビをしているこなたにオレは声をかける。
「あっ、シン…じゃなくってアスカちゃん乙〜」
「バイト終わったんだからアスカちゃんは止めてくれ………」
「いや〜その格好でいるとつい、ね」
確かに今のオレの格好はメイド服に、こなたに負けないくらいの長髪のウイッグを付けて、どっからどう見ても女だ。
「誰が好き好んでこんな――」
「はいはい。いいから早く着替えてもう帰ろ。わたし疲れたよ」
オレの怒りをいつも通りかわしてこなたは更衣室に入っていった。
男のオレが女になって接客をしてると思うとかなり泣けてくる光景だが、
こなたの家に居候さしてもらっているオレにとって、ここの給料の高さは魅力だから仕方が無い…と分かってはいるものの………。
「どったの?」
隣で歩いてるこなたが聞いてくる。
「いや、こんなの知り合いには見せれないな、と思ってさ」
「まあそうだね〜爆笑必至だもん♪」
「……なんかオレ、アイツらに隠し事してる事が多いよな………」
「あいつらって、つかさ達?」
こなたの問いにオレは頷く。
バイト先でオレが女装してるなんて事も知らないし、オレの過去の事も知らない………。
「じゃあシンはね、答えられる?」
「ん? 女装してる事か?」
「ううん、前の世界のこと聞かれたら」
どうやらオレが何を考えていたのか分かられていたらしい。
あいつらにはオレの事を知って欲しいという思いはある。
だけどあいつらにとってそれは興味がない事かもしれないし、そして何よりオレの過去を知って拒絶されるのが怖かった。
それだけの事をオレはやってきたのだから………。
「話す話さないはシンに任せるけど、わたしは話して欲しくないかな」
おかしな事を言うこなた。
まさか秘密を独り占めしたいなんて理由じゃないだろうし………。
「前にも言ったかもしれないけどそんなシンの顔、わたしなら見たくないもん」
こなたの指摘にオレは自分の顔を触る。
こなたが言うには、オレは過去の話をする時は寂しげな顔をしているらしい。
そして今もそんな顔をしてるんだな………。
「じゃあ話すときは仮面でもつけて話さないとな!」
しばしの沈黙があって、オレは努めて明るく言う。
「変体仮面ですね! わかります!」
こなたもハイテンションで話を合わせてくれる。これでこの話題は終わりだ。
「帰るか!」
「うん!」
言うと同時にオレとこなたは家まで走って帰った。