「じゃあ私達は行くわね、姉さん達にもよろしく言っといって」

「うん」

 彼氏のバイクに乗ろうとする私、見送るつかさ。

 少し不思議、誕生日につかさの隣にいない日が来るなんてね



 彼氏が振り返るその紅い瞳には、本当にいいのか? と尋ねている。

 そりゃあつかさの隣にはいたい

 でも私は彼氏の側にもいたい、そしてつかさもそれを後押ししてくれている。

 だったら決まっている



『自分達の振る舞いは、理解者あってのコトだと、もうちょっと感謝すべきだよな』



 あれ? ひょっとしてこの言葉、私にも当てはまる?

 いやいや、わたしはあいつ等よりは周りに感謝してるわよ!



「色々とありがと………」

「ん? なんか言ったか?」

「べ、別に」

 ほ、ほら、感謝の言葉だってちゃんと言ってるでしょ!?



「あっ、言うの忘れてた」

 つかさの言葉に止まる私と彼氏。

「あのね」

 何故かつかさは私ではなく、彼氏の方を向く。

 そして笑顔でさらりと



「お姉ちゃんをいっぱい、いーっぱい愛してあげてね!」



 この場の時を止める言葉を言い放った。



「つかさぁぁー!?」

 時が動き出し、絶叫する様な声を出す私。



 もちろんつかさに悪気があって言ってるわけではないという事は分かってる

 今の言葉も、彼氏にこれからも私の事を頼むというニュアンスなんだろう

 ただ私の彼氏はそんなに純真ではない、むしろ穢れている、澱んでいる、スケベだ!



「ああ、まかせろ。誕生日だからな」

 力強く、そしてにやりと笑う彼氏。

 ほらぁ〜別の意味に解釈しやがった………



「お姉ちゃんどうしたの、顔が真っ赤だよ?」

「うるさい!」

 引き金を弾いた事に、全く気が付いていないつかさが心配そうに声を掛けてくる。

 やっぱり私はあいつ等とは立場が違う、私の方が被害者席に鎮座する方が圧倒的に多いのだから



「かがみ」

 頭を抱えてる私に彼氏が、ムカつくほどの笑顔を浮かべる。

 見た目は本当に優しい時の笑顔とそう変わらないのに、何故か分かってしまう

 そして経験上、この笑顔の時のこいつはろくな事を言わない。



「照れるなよ」

「黙れぇぇぇぇぇ!!」



 七夕の日に、私の羞恥の気持ちが存分に入っている絶叫が近所に響いた。





〜 F i n 〜   






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