集合場所について30分、集合時間を過ぎて10分が立った。

 相手であるかがみは姿を見せていない。

 学校の様子からしても、時間に遅れるようなやつとは思えない。

 とすると可能性としては、ドタキャンかからかわれたかのどちらか、といったところか。



 オレとかがみはこなたを通じての知り合い程度でしかないし、

こなたが参加しない以上かがみが来たくなくなるのは充分に考えられる。

 としたらここで待ってるのは無意味。さっさと戻ったほうがいいだろう。



 とはいえあいつがそんな身勝手なやつとも思えない。

 嫌なら嫌であの場で言うか、来て直接言うか―――



 馬鹿らしい



 なんで知り合って2ヶ月もないやつを弁護しているのか

 そもそもオレはかがみのことなんか何も知らない。

 本当は約束の1つも守れないやつだったのかもしれない。



 短い付き合いであればあるほど、破っても罪悪感を感じないのはこっちの世界でも同じらしい。

 どこの世界でも人は信じられないもんなのか



 だからオレがこの場を後にできなかったのは、暗鬱になっていたからで別にあいつが来るなんて思っちゃいなかった。



「シーン!」

 そんな声がしたのは集合時間から1時間が経とうとした時だった。

 待ちぼうけをしてるオレを笑いにでも来たのか



「ごめんなさい」

 オレの前にくるやいなや、かがみは深々と頭を下げた。

 いつもの軽口で勝気なかがみではなかった。

 その真摯な様子はとてもオレをからかったとは思えないけど………



「ん?」

 頭を上げてから気づいたけど、かがみの服は泥で汚れていた。



「どうしたんだよ、それ?」

「えっ、ああ、ちょっと、車に泥をかけられて………、だから遅れちゃって………」

 気まずそうに返すかがみ。



「ふざけるなよ」

「えっ?」

 オレの言葉にかがみの顔が蒼白になる。

 こいつは本当にオレをどこまで見くびったら気がすむのか



「事故に合いそうだったらもっと動揺してるだろうし、ただの泥跳ねくらいでこんなに遅れるわけがないだろうが!」

「いや、本当に………」

「じゃああんたは泥かかったくらいで約束を破るやつなんだな!?」

「……迷子」

「迷子?」

「迷子になってる子の保護者を一緒に探してたの。会ったところはそんな施設もないし、

でもそんなの言い訳だし、遅れたことに変わりはないし………」

 この様子だとオレをはめようとか思ってたわけじゃなさそうだ。

 ウソを付いてるというわけでもないし、勝手に破ったと思ったオレ。

 この場合裏切ったのはオレの方。



「悪かった、ごめん」

「なんでシンが謝るのよ……… ?」

「あんたを、かがみを信用してなかったからな」

「でも遅れたことに変わりはないから………」

 ますます落ち込むかがみ、

 これを見るとかがみの方はそれなりに楽しみにしてたのかもしれない。



「携帯教えろよ」

「えっ?」

「またこんなことが起きたら呼べよ、そういうのは得意な方だしな」

「そんな…本当にいいの?」

「ああ、もっともそっちがオレをしんよ―――」

 途中でかがみがオレの手に携帯を置いた。

「もちろん。だってなんだかんだで待ってくれてたからね」

 かがみが微笑む。それはいつも見慣れた制服じゃなく女の子らしい服と相まって可愛く見えた。

「か、勘違いするなよ! どうせ、この後やることもなかったからな!」

「暇すぎない、それ」

「うるさい!」

「ふふ。じゃあ、最初は洋服選びに行っていい?」

「好きにしろよ」

 頷くとかがみはやはり泥だらけの服は嫌なのか、少しだけ早く歩き出した。

 そしてオレはそんなかがみを走って抜いてやった。





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