『次の日』





「う〜ん」

 目が覚めたのは時計の音とか、習慣じゃない。もっと違う何かを感じたから。

 そして目を開ける。当たりは真っ暗だけど、何も見えないってほどじゃない。



「あっ………」

 全身に痺れるような甘さを感じ、私は思わず小さく声を上げる。

 何かの正体、それはこれ。

 そして自分の胸の方に目をやると、そこにはやっぱりというか予想通りというか、手があった。

 もちろん私の手じゃない。隣で寝ている彼氏シン・アスカのものである。

「あんたって人は〜………」

 いつもなら鉄拳の一発も入れるところだけど、私はシンが未だ寝ていることに気付いたので、胸に触れてる手をそっとのける。

 私達は恋人同士、ましてやシンは無意識だったら怒る理由なんてない。

 シンが起きてる時だと意識してしまう、だからつい怒ってしまう。

 いつもこんな風に対応できたら、私とシンのケンカはもっとずっと少なくなってるはずだ。

 でもそれができれば苦労しない。



「……かがみ………」

 寝言を呟くシン。

 夢の中でも自分のことを見てくれるなんてこそばゆい。けどすっごく嬉しい。



「ありがとうシン」

 夢のことだけじゃない。

 もう日付が変わってしまったけど私の誕生日にシンは色々としてくれた。

 つかさのバースディケーキの手伝い、その後の私の誕生日を祝う時にも頑張ってくれた。そしてその後も。

 いつもここって時は私を助けて、私の大切な人達を守ってくれる。

「感謝してる」

 ううん、違う、助けてもらってるとか、貸しがあるからとかそんなんじゃない

 好きだから、自分と少し一緒でだいぶ違う。全く別の所からきたこの人が



「シン、大好き」

 面と向かって言ったのは一回だけ、告白した時、それ以外はこうやってシンが寝ている時だけ。

 意気地なし。なんで起きてる間に言えないんだろ?



 でも、それでもきっと私の気持ちは届いてるわよね?

 だからこうして一緒にいて、誕生日を祝って、横で寝てくれてる。



「大好き」

 そして私はシンを抱きしめ眠りについた。





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