『仲直りの仕方』
1
学校が終わって女子学生と男子学生が一緒に帰る。
恋愛系小説ならばさぞかし盛り上がるシーン。
「ちゃんとやってきなさいよ!」
「わかってるって、かがみうるさいぞ!」
「うるさいとは何よ!? あんたが日頃私の課題をちゃんとやってこないのが悪いんでしょ!?」
「出し過ぎなんだよ、あんたは! あんなにできるか!」
…………。
残念なことに私とあいつは、そんな甘酸っぱい展開とは無縁である。
『顔を合わせば』『二人だけになっても』どんな場面でも最低一回は口ゲンカ。
だからといって私は今目の前にいる男の子のことが嫌いではない、というかその逆。
ただ正直になれないだけなのだ
「明日は日曜でしょ、できるわよ!」
「プラモ作りの時間を削れってのかよ!?」
「うん」
「マジかよー!」
あいつはがりがりと頭をかくけど、それ以上はもう言ってこない。さすがに観念したらしい。
周りのことなんか気を配らないあいつが、なんだかんだいっても、問題を作ってる私に気を遣ってくれているのだ。
そんなところからもあいつの方も私には友情以上のものをもっているはずである。
そうでもなきゃ、自身の壮絶な過去を私に話してはくれないはずだ。
ただその割に普段の行動からは全くそんな素振りを見せないのは、あっちも素直じゃないからであろう。
とは私を含め、恋敵全員の意見。
友達以上恋人未満
今のこの関係に満足はしてないけど、不満はない。
確実に私とあいつの仲は進展している、それが感じられるから。
「じゃあ月曜日」
「ああ」
律儀に護衛にと家の前まで送ってくれたあいつの無愛想な顔を、しっかり頭に焼き付けて家の中に入る。
「ふふふ、うふふ」
笑みが枯れることなく溢れてくる。
恋人同士、それが手に取れる距離にある気がした。