『偽らざる心』
1
「一緒にならないか?」
皿洗いの為に、皿を渡してくるかがみにオレはそう告げた。
不意打ちというのはかがみが目をパチクリしながら、オレの方を見ているのをわざわざ確認するまでもなく分かっている。
確かに卑怯だ
ご飯を食べている時にそんな会話を全くしなかったのだから
でも卑怯といわれようがオレはかがみと一緒になりたかった。
「う、うん、ちょっと考えさせて」
だけどかがみは冷静に、そして明らかに困惑の表情を浮べて返す。
付き合い始めて間もなく4年目、来年には2人とも大学を卒業する。
オレに至っては就職先がすでに決まってるし、かがみもオレと一緒にいたいというのは日頃の言動と挙動で確信出来ていた。
それなのにこの反応………
「私帰るね」
いそいそと帰り支度を始めるかがみ。
明日は日曜、1ヶ月に1回しか会えない俺達の関係を考えれば、泊りが基本。
なのにいきなりの帰宅発言。
結果を嫌というほど突きつけられている
「あ、ああ………」
でもオレにはどうすることも出来ず、かがみを半ば呆然と見送るしかなかった。