『ケンカするほど………』





「まだこんな時間か…今日は早く帰れそうだな」

 俺は腕時計を見て独り呟いた。



 俺は大学を卒業した三年後に結婚した。相手は高校を卒業してからずっと付き合っていたかがみだ。

 なぜ結婚までにそんなに時間がかかったかというと、俺達二人が素直じゃないためってのもあったが。

 最大の理由はかがみが司法試験に合格するのを待っていたためだ。

 そしてかがみの努力が実り一浪の末司法試験に合格し、念願の弁護士となって俺と結婚した。

 夫婦仲はしょっちゅう喧嘩はするが、まあ良い方に入るだろう。

 問題があるとすれば、このところかがみの体調が良くないというところだろうか。

 みゆきのところで見てもらえと言っているのだが、本人は笑って俺の言うことを聞いてくれない。

 かがみは昔から辛いことがあっても我慢するところがある。もう少しくらい人生のパートナである俺に頼ってもいいと思うんだが………。



「無理してないといいけどな………」

 呟くと俺は家のドアノブに手をかけた。





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