『First Kiss』
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キスの味ってどんなんなんだろ?
昔見た少女漫画にはレモンやマーマレードの味と表現してあった。
実際に人間からそんな甘酸っぱい物資は出ない、要するに錯覚。
そう、錯覚
でも今なら分かる。
それは錯覚だけど、錯覚じゃないってことが
「……キスか」
言葉と同時に唇を自分の手でなぞる。
明日はシンと三回目のデート。そしてそれは私のファーストキスの日。
といってもそれは私が勝手に決めている恋人達の理想段階。
だから別にシンと三回目はキスをしようなんて決めているはずもない。
それどころかあの超にぶい男のことだ、私がキスを望んでいることにすら気付かないもかもしれない。
それにこういうことで計画通りに進んだ試しがない!
でも今までの流れは悪くない、とは思う。
今月のところの手帳を開けると、デートと書かれているところは今のところ三つ。
一回目は大ゲンカ、二回目は終始楽しく、だんだんと恋人同士っていう感じにもなってきている。
「時は来た」
と言ったもののそこまで大仰なものかとも考える。
苦笑を消す為になんとなく手帳を見やると、デートの感覚が凄く短いことに気付き、さらに苦笑してしまう。
なんと一週間で三回、それ以外の日でもこなたの家に遊びに行ったりしてるから、ほぼ毎日シンとは顔を合わせてるといってもいい。
ちょっとバカップル過ぎる
でも大学が始まると私は………。だから今は会える内に会っておかないと
だからやっぱり今日にはやっておきたい、恋人の証、キスというものを
「……キスか」
私は再び呟き、練習に口をそれっぽい形に変形させる。
がちゃ
「かがみー悪いけどさー………」
礼儀もノックもなく部屋に入ってきたのは、近い姉であるまつり姉さん。
「…………」
「…………」
もちろん私はこの後徹底的にからかわれた。