『年末の日の日常』
1
自分の部屋での雑用を終えて居間に顔を出すと、妻であるかがみがすでにくつろいでいた。
どうやらあっちも片が付いたらしい
「お疲れ」
「サンキュ」
座ると同時に右側で座っているかがみが蜜柑を差し出してくる。
それを取ってこたつに足を入れる。
俺もかがみも昨日で仕事終わり。
師走というだけあって十二月にこうしてかがみとゆっくりの時間を過ごせるのは大晦日の前日、つまり今日この時が初めてだ
なのでオレは必要以上にかがみの側による。勿論かがみも。
「あっ、れいの成績だけど見たっけ?」
「ああ、見た」
オレ達は蜜柑を剥きながら会話を交わし、剥いた蜜柑をお互いの口に放り込む。
俺達の息子れいは今年から小学生に入っていた。
通知表は先日れい本人から見せられたけど文句なしの出来。
ここらへんは恐らくかがみに似たんだろう。俺に似たのならもっと成績の凹凸が激しい。
「で、先生はなんて言ってたんだ?」
「ああ、それね」
忙しかったため俺は未だかがみの口から、この前行われた担任との面談の話の内容を聞いていない
れいの事だから特に何か悪い事を言われたという事はないだろうけど、やっぱり親としてそこは気になるところだ
「成績は見ての通り。クラスでは常に冷静で話をまとめるリーダー的存在。
ただね」
「ただ?」
「正論言って女の子を泣かしちゃう時があるんだって」
「はぁ?」
「誰かさんにそっくりね」
かがみがにやにやとこっちを見てくる。
どうやら戦いの始まりらしい
「なっ!? 俺の事かよ!?」
「そうよ、もっともれいは正論言うからマシよね〜」
「なんだよ、それだと俺がまるで理由もなくお前を泣かしてた事になるだろ!?」
「違うの?」
「うっ………」
かがみの反撃によって、俺は沈黙を余儀なくされる。
何か言い返したいけど、全くかがみの言う通りなのだから何も言えない。
「うそよ、うそ。いつもおかしな理由で泣かされてたがほんとよね」
「変わらないだろそれだと」
頭を片手で押さえて完全敗北の俺の様子を見て、かがみは本当に楽しそうに笑う。
こうやってかがみと口ゲンカするのも久しぶりだ。
別にお互い本気でやってるわけじゃない
こうする事で俺はかがみが特に異常がない事を知る。そしてかがみも
これが俺とかがみだけのコミュニケーションのやり方