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「……かがみ無理しなくてもいいぞ」

 未だに出だしの言葉を考えていた私にあいつが呟くように言ってくる。

「えっ?」

「オレの勘違いだったんだな」

 そう言ってあいつは寂しそうに笑う。

 私はその笑顔に嫌な予感を感じる。

「この事は忘れてくれ…教室に行こうぜ」

 そ、そんな…なんで………?

 勘違いなわけないじゃない、私がここに呼び出したのよ…それにさっきまであんたもそんな雰囲気だったのに、なんで………?

 私のせい? 私の煮え切らない態度にあいつはあきれちゃったの………?

「じゃあ、行こうぜ」

「待って!」

 踵を返して歩き出そうとするあいつを止めて、私はあいつの胸に飛び込む。

 告白の言葉はまだ思いついていない。でも今ここで言わないと、私は一生その言葉が言えない気がした。

 前にもこんな事はあった、その時私は言い訳をして誤魔化してしまった。でも今言い訳めいた事を言ってしまったら、私はあいつと一緒になれない。

 言わないと。

 私はあいつと一緒に歩きたいから―――



「……シン、大好き」





「ほほ〜それでそのシンの頬の紅葉は獣に変身した証ですかな?」

 教室に入って、私達が付き合うことを親友達に報告した後こなたが聞いてくる。

「違うわよ、私を引っ掛けた罰よ」

「あの場面はああ言わないとお前が動かなかっただろうが!」

 私が睨みつけると相手もこちらを恨みがましくこっちを見てくる。

「それは御二人だけの事でしょうから、あえて聞きませんが…かがみさんその髪………」

「お姉ちゃん、確か学校行く前はちゃんと結んでたよね?」

 そう、みゆきとつかさが指摘するように、私はいつも学校でしているリボンを外し、髪を下ろしていた。

「元々可愛いって言われたのがきっかけでやり始めたんだけど、もういいの。だって、もう必要ないから………」

 私は左手に持ったリボンを見つめてから隣を見る。

「ああ、オレがいるからな」

 私を見ながら、シンは微笑む。



 その右手にはリボンを握り締めて。





〜 E n d 〜   






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