「分かった!!」

 突然の大声にオレはかがみの方を見やる。

 一体何が分かったって言うんだ?



「シン今日の私達ってどこかいつもと違うと思わなかった?」

 かがみの質問にオレは頷く。

 最もそれが嫌じゃなかった。逆に言えなかった事が簡単に言えて、かがみとの距離がますます縮まった気がする。

 そしてきっとかがみもそうなはずだ。



「私とシンって今日が初めての海なのよ」

「あっ………」

 かがみは興奮して全てを伝え切れていないけど、理解出来た。

 今回の旅行がオレとかがみの2人の念願だった事に



「シンがこの世界にやってきた年に私はこなた達と、海に行ったのよ」

「でも、オレは行かなかったんだよな」

 その時のオレは元の世界に帰る事で頭が一杯で、誘いを断っていった。



「確か去年は………」

「私がダウンしちゃった」

 バツが悪そうに笑うかがみ。

 その後でかがみ自身はいつものメンバーと海は行ったらしいけど、オレはバイトもあり、で結局去年の夏はかがみと海に行く事はなかった。



「嬉しかったんだな」

「うん!」

 2人っきりの海、それがいつものオレ達じゃなかった魔法の正体。



 そりゃかがみと泊りがけの旅行って事で楽しみにしていた。

 でもどうやらオレの中で自分が思ってたより、この事を楽しみにしていたらしい。



「だから、きっと素直になれたのね」

「ああ、かがみと初めての海だからな、楽しい思い出を一杯作ろうと思ったんだな」



 かがみの恥ずかしがる顔

 嬉しそうな顔



 今日のかがみの全ての表情はオレの中にずっと残るものだ。

 いつもみたいに接していたらきっと見れなかった表情。



 絡めいているかがみの指が少しだけ強くなる。

 オレも少しだけ強く握り返すと、かがみは本当に嬉しそうに微笑む。

 いつもの笑顔とは少し違う

 どっちが良いかなんて、答えられるわけがない

 どっちもオレにとっては最高のものなのだから



「シン、少し歩かない?」

 もう辺りはすっかり暗くなっていて、いつ旅館に引き返してもおかしくない時間だ。

 ただ、オレもかがみもそれ拒んだ。

 旅館に戻ったら、魔法が解けそうで

 別にいつもの関係が嫌になったわけじゃない



 ただ



「ああ、そうだな」



 オレもかがみも

 もう少しだけ魔法にかかっていたかった





〜 F i n 〜   






戻る        別の日常を見る