『Valentine's Day after next Day』
1
私の手には昨日のバレンタインに渡しそびれたチョコが握られている。
あいつに渡すためのチョコが…って、うぁ〜緊張してきた………。
「おっ、いたいた。かがみー!」
その声に心臓が高鳴る。
「おっそい!!」
「なんでだよ!? 約束の時間10分前だろ!?」
「私なんて二十分前に来たのよ!」
「そっちが勝手に早く来すぎただけだろ!!」
「女の子を待たせる時点でダメよ! 今度から気を付けなさいよ!」
「ハイハイ、分かりましたよ。かがみさま」
「かがみさまって言うな!」
うん、大丈夫。あいつといつも通りの口ゲンカ。いつも通りの私だ。
「で、用ってなんだよ? ケンカするために呼んだんじゃないんだろ?」
「あ、当ったり前じゃない! ……は、はい、これ」
そう言って私は、ラッピングした外からでも形が歪だとわかるチョコレートを差し出す。
……悪かったわね! どうせ私は料理が苦手よ!!
「こ、これをオレにか?」
私が頷くの見るとあいつは顔を強張らせ、私のチョコを受け取ろうとしない。
「な、何よ!? か、形はこんなんだけど、あ、味は、だ、大丈夫だって!
……そ、それとも、遅れたのは受け取れないっての!?」
「……あ、いや、でも、これって………」
なおも戸惑うあいつに、私はまくしたてる様に自分の気持ちを伝える。
「だ、だいたいバレンタインにチョコ渡すのは、お、お、お菓子会社の陰謀なんだし、い、いつ渡すかは、わ、私の勝手でしょ!?」
それだけ言って私はそっぽを向く…って全然違〜う!
私は何やってんのよ〜!?
こんな言い方だったら、超鈍いあいつに伝わるわけないじゃないのよ〜!
こういう時素直になれない自分の性分が物凄く恨めしい。
でも、顔を真っ赤にしている段階で普通わかるでしょ!?
と半ば逆ギレ気味にあいつを睨む様に見ると、私とは逆になぜかその顔は青ざめていた。
「……そうか…分かった………」
そう言うと、あいつはチョコを受け取ると、踵を返して行ってしまった。
「……え?あ、あれ?」
思わず間の抜けた声を出す私。
……あいつの事だから私の想いなんて気付かずに、腹立つほどの笑顔を私に向けて、チョコを受け取ると思ってたのに………。
ん? 予想とは違う行動に出たという事は…私の想いに気付いた? ……でもあの態度って事は…えっ、これって……もしかして………。
最悪の答えが私の頭を埋めつくす。
……私…フラれた…の………?
キーンコーンカーンコーン♪
朝の予鈴がなっても頭が真っ白になった私は、しばらく動くことが出来ず、あいつが歩いていった方向を呆然と見るだけだった………。
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