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「今日はないわよね〜」
私は携帯を耳に押し付けて、ポッキーの袋を開ける。
『そうか? オレはありだけど』
相手はつい数時間前まで一緒にいた相手シン。
「えっ? あれで? あんた変わってるわねー」
私はまだ慣れない感触の携帯を利き腕で支える。
『いいだろ、望みのものは手に入ったんだし』
私は耳から少しだけ離して携帯を見る。
まだ機能の全部は把握していない赤色の新しい携帯。
お互いがお互いを少しでも身近に感じる様に選んだ。
もちろん契約も恋人同士に相応しいものに変更した。
『それにさ』
「あっ、うん」
私は携帯を再び耳に引っ付ける。
次にシンの言う言葉を全く予測することもなく
『かがみと一緒だったら、どこにいっても楽しいしさ』
その言葉を聞いて私と新しい携帯が一つになった
なんでこいつはこんなに恥ずかしいことを簡単に言えるのか
基本的に私よりも素直じゃないくせに
『あれ? かがみ、どうした?』
しかも無自覚
私がどんな顔になってるのかも知らないで!
でもあんなに最悪のデートだったのに、それでも楽しいと感じることが出来たのはそれが理由か………
『あっ、ワルイ、オレだけだったな』
あっけらかんというシン
その言葉も悔しいくらいに心地良い
でも苦しくって、その苦しさに耐え切れなくなって
「そ、そんなわけ、ないでしょ………」
とうとう口から溢れてしまう。
『ん?』
「わ、私も、シンといれて、す、すっごく、……楽しかったわよ………」
新しい携帯はもう熱を帯びてきていた
〜 F i n 〜