『二人はライバル』
1
「お姉ちゃん、今いい?」
「うん? いいわよ」
つかさが部屋を訪ねてきたのは私が宿題に盛を出しているところだった。
「あはは、ごめんね」
「どうしたのよ、一体?」
つかさが一向に話を切り出さないため、手を止めてつかさの方を振り向く。
「あ、う、うん…あ、あのね…お姉ちゃんって人を好きになったことある?」
「えっ? な、何よ、と、突然?」
これが少し前なら苦笑交じりに冗談で返せたのに、現在の私では動揺がバレない様にするのが精一杯
「……聞きたいって思ったの。人を好きになるってどんな感じかなって………」
私はつかさの言葉を聞いて心の中で安堵の溜め息を吐く。
どうやら、私ではなくつかさの方の話らしい。
そうと分かれば私としてもつかさの相談に乗ってあげたい
「……と言うことは、あんた誰かのことを好きになったの?」
「うん、それが分からないの…気づいたらその人の姿が浮かんでくるの、それでその人のことを考えると胸が苦しくなって………」
「……ふーむ、間違いないわね」
私は眉間に人差し指を押さえながら自分の経験上からの答えをつかさに伝える。
「や、やっぱり、そうなんだ………」
そう言ってつかさは顔を真っ赤にして俯いてしまう。
その行動が余りにも可愛くて、私は思わず笑みをこぼす。
「で誰? 私の知ってる人?」
「え、えっとね………」
つかさは人見知りする事もあって、男子とは自分から話すことは中々ない。
そのつかさに慕われているのがどういうやつか興味はあるし、
それにひょっとしたら、つかさをそいつに任せる事になるかもしれないのだから
そういった真剣に知っておく必要とからかい半分、に私は質問する。
「わ、わたしと同じクラスなんだけど…お姉ちゃんも知ってる人なんだけど…ダメ〜これ以上は言えないよ〜」
「いいわよ言わなくても。
明日つかさの態度で分かると思うから」
「あう〜」
本当にこれ以上聞くとオーバーヒートで倒れるのではないかというくらいに、つかさは全身が茹で上がったように真っ赤になっていた。
つかさは派手で目立った感じではないが、料理は上手いし、健気だし、可愛いし、優しいし
いかにも女の子然とした感じが出ていて、つかさを彼女にする人は本当に幸せだと思う。
でもつかさに彼氏が出来ると恐らく私と一緒に行動を取る事も少なくなるだろうから、
そう思うと少し寂しい気もするけど…それでつかさが幸せになるんだったら………
「つかさ、私に出来ることがあったら言ってね、協力するから!頑張りなさいよ!」
「う、うん、ありがと〜お姉ちゃん!!」
私はつかさの笑顔を見ると思わず抱きしめた。