『前夜の出来事』
1
後二日、今日眠ってしまえば後一日、それで私の高校生活最後の夏休みが終わります。
今年は受験のため、例年よりも勉学に励まなくてはいけませんでしたが、最後の最後で素晴らしい催し物があります。
それはあの方の誕生日会。
あの方の誕生日は本当は明後日、つまり九月一日なのですが、せっかくなので夏休み期間中にやるという話が私達『SOG』団で出て、
八月三十一日にお誕生会をやる事が決定しました。
もちろんあの方には内緒のサプライズパーティです。
あの方の驚かれる顔と笑顔。
先程からそれを想像してしまい、開いてあるテキストは一向に進んでいません。
受験生なのに、とは思うのですが、今ばかりは特別です。
そうです、私にとってはあの方は特別なのです。
だからこうして
私は机の引き出しからラッピングされた箱を取り出します。
探すのに五日の時間を費やし、買うのを三日考えた、あの方に対する誕生日プレゼント。
時間を無駄に過ごしたとは思っていません。
プレゼントを選んでいる時はとても楽しくて、それこそ時を忘れていました。
あの感覚はおいそれとは味わえるものではなく、失いたくもありません。
「今日はもう終わりにしましょう」
今日は勉強をやっても頭に入ってきません、私の頭はあの方が笑顔で、ありがとうと言う場面がずっと再生されているのですから。
これを恐らく妄想というのでしょうね。
もし今想っている事をあの方に知られたら、私は恥ずかしさのあまりどうにかなってしまう事でしょう。
ですが、今はいいのです。
ひょっとしたらこの妄想が明日には現実になるかもしれませんから、練習をしておいて損はないのです。
だから私は想像します。
あの方が私に向けて下さる最高の笑顔を。