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『どうだったレイ君下界は?』
『それなりに、でしたね』
何故素直に楽しかったと答えなかったのか。
ただなんとなくそう答えるのが気恥ずかしかった。
『うふふ、それは良かったわね』
恐らく俺の本当の気持ちなど理解しているのだろう、かなたさんが微笑みを浮べる。
母とはこういうものなのか、まるで自分が大きな手の平の上で転がってるかのようだ。
『かなたさん、今回は本当にありがとうございました』
『いいのよ、そんなの。
それよりも』
そしてかなたさんは俺を抱きしめる。
不思議だ、幽霊のはずなのにかなたさんからはいつも温もりが感じられる。
『おかえりなさい。無事で良かったわ』
元々俺は幽霊なのだから、無事に帰ってこられるに決まっている。
なのに何故だ
『はい』
無性に言葉が、思いやりが嬉しい
『ら、らめぇ〜!!』
下から聞こえる声に、俺とかなたさんは顔を見合わせる。
『またこなたは余計な事をシン君に言ったのね。
どうして女の子らしく励ます事が出来ないのかしらー?』
『それがこなた嬢のいいところだと思いますよ』
『そうなんだけどね、でもそれだと彼氏が出来ないわ』
『大丈夫です、まだ決着はつきそうにありません』
今日見た限りでは、シンも彼女達もまだまだだ。
シンは全く気付いていないし、彼女達も踏ん切りがついていない。
一体いつまで、こんな関係が続くのだろうか
『じゃあ、私達はまだまだ見守っていないといけないわね』
『そうなりますね』
嬉しさを溜め息に隠す。
そんな事が死んでからは多くなった気がする。
もちろんそれが嫌ではない
『仕方ないわね、今日はこなたの夢枕に女の子の心得を教えに行きましょう』
『ほどほどにお願いします、あまり依怙贔屓はダメですよ』
『もう〜レイ君は厳しいわね』
そしてかなたさんは少女の様な微笑を浮べる。
本当にこの親子には頭が上がらない
〜 f i n 〜