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隣にいるみなみさんが携帯を開け、そしてすぐに首を振ります。
「……どこに行かれたのでしょう………?」
「分かりません、ですが、きっと何か事情があるのだと思います」
ご家族であられる泉さんや小早川さんに何も言わずに、消えるということは今までになかったことです。
何か重大な、元の世界のことに関することというのが私達四人の見解でした。
とはいえそれだけでは手がかりが少なすぎます。
「……みゆきさんは、こういう時でも冷静ですね………」
「そんな……、そうかもしれませんね」
私はあの方が何も言われることなく、このまま黙って帰ってしまわれるということはないと思っています
あの方は私の、私達のずっと側にいてほしい、という我儘に頷かれました。
あの方は約束を破る方ではありませんし、万が一違えたとしても誠意をもって頭を下げられる方です。
ですから、帰る時は事前に私達に打ち明けてくださるはずです
ですが、それがありませんでした
ただ
もしあの方が、元の世界が心配でその帰る方法が分かれば、どうなされるか、
短い付き合いでもなく、好意を向けているからこそ容易に想像がついてしまいます。
きっと周りが見えなくなられていることでしょう
「はぁ」
「……?………」
私の深い溜息にみなみさんが心配な顔でこっちを見てこられます。
「大丈夫ですよ」
私の言葉の後に都合良くみなみさんの携帯が鳴ったので、このことはうやむやになりそうです。
まずはあの方を見つけることです
見つけてあの方の考えを、聞くことが何より大切なのです。
例えそれがどんな話で、どんなことになったとしても
私は少し視界が悪くなったので、眼鏡を外しました。