「……コレ、提出遅くなったんで」

「なんや、そこまで気ぃまわさんでええって」

「……それと」

「それと? まだあるんか?」

「いつもお世話になってる………、ありがとうございます」



 そしてアスカは逃げ去るように走っていった。

 アスカが料理するのを好きとは知とったけど、まさかの手作りクッキー。

 実際照れくさかったんやろう、アスカの顔が赤うなってるのをうちは見逃さんかった。



 …………。



 って、ちょい待て! おのれは恋する乙女か!?

 っていうかそういう役割は普通逆や!



 というツッコミも職員室で叫ぶわけにもいかず

 なんとなくの不完全燃焼をうちは椅子の背もたれにぶつける。



「もてますな〜黒井先生」

「あはは、男にもこれくらいモテたら、とは思うんですけど」

「アスカは男ですよ?」

「まあ、そうですな」

 冗談やろうけど確かに桜庭先生の言う通り

 だけどまあやっぱりアスカは生徒、今んところはそうとしか見れん



 好きになる異性もええけど、慕ってくる生徒にはまだまだ勝てんな

 ということはこのクッキー、極上のプレゼントちゅうことやな



「桜庭先生」

「なんです?」

「天原先生と帰り一緒ですやろ? うちも少しご一緒させてもらってええですか?」

「了解。先にふゆきにはメールで黒井先生がお茶について知りたいことを伝えときましょう」

「おおきに」



 そしてうちと桜庭先生は少しでも早く上がれる様に、最速かつ繊細に仕事に取り掛かった。





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