『とある生徒の成長経過』
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「失礼します」
まったくそないなことを思ってないと断言できる顔で、職員室に入ってきたのはうちの担任の生徒。
アスカ・シン。二年の中頃からこの陵桜学園に転校してきたから、付き合いはもう一年以上や。
この年の子が一番変わる時期やいうけど、こいつが一番変わったんとちゃうかな
『アスカ・シンだ』
転校初日の挨拶はそれだけ言い捨てて、アスカは自分の席に着いた。
反抗的なガキ、最初の印象はそんなんやった。
事実アスカはクラスのトラブルメイカーやった。
授業はサボりこそせんかったけど、まるで受ける気なし。
他生徒とは言い合いなんかしょっちょう。
おまけに喋らんから、女子どころか男子連中からも受けも悪い。
問題児。ただ今までうちが見てきた問題児といわれる生徒とはなんかアスカは違った。
若さ故の暴走。そんなんとはちゃう、もっと悲哀みたいなそういうもんがアスカの周りを漂とった。
「先生これ」
「なんやこれ? ラブレターか?」
「違います! 進路希望書、出せ出せってうるさいから」
「現に出してないのお前だけやったからな」
「だからってネトゲ中に催促するはやめてくれませんか?」
文句をたれるアスカをうちは笑って流し、持っている進路希望書を受け取る。