『Twins2人』
1
「……困ったわね〜」
どこの家庭でも見ることがほとんどなくなった黒電話の受話器を置いて、みきは眉にない皺を作る。
急な町内会の集まり、代々神主としてこの地に住んでいる柊家としては顔を出さなければならない。
とはいえ、神主であるただおを日曜日に行ってもらうわけにはいかない。
小さな神社とはいえ祈祷に人が来るかもしれないのだから。
とすれば行くのは自分なのだが、みきの記憶が正しければその日は長女いのりも次女まつりもすでに予定が決まっている。
残っているのは来月から高校に通うことになっている、双子の三女と四女。
「どうしようかしら?」
行事も特になく、参拝者もあまり来ないと思うのだが、それでも心配なのはやはり末の子達だからだろう。
「お母さ〜ん、まだ? もう食べちゃうよー?」
次女のまつりが待ちきれないといった声を居間から出してくる。
うかうかしてると次女と三女が喧嘩しかねない、みきは考えを中断して居間に向かう。
それにどっちにしても、家族で相談しないといけないことなのだから。
「というわけで、明日私は町内会に出ないといけないのよ」
「ふむ、そうなると………」
みきの報告を聞いてのんびりとした声を出すただおだったが、妻と同じ心配をしていた。
そんな様子に気付いたのか、心配されている片方である三女かがみが、
猛烈な勢いで繰り出していた箸を止めて、ただおの方を盗み見る。
「私は会社関係だし、まつりあんたは?」
「え〜私?」
不満ありありを顔に出すまつり。
遊びをキャンセルして、その上妹のお守りをさせられたのではそんな顔になるのも無理はないといえる。
とはいえ妹達が心配なのも事実であり、まつりは不承不承に頷く。
「しゃあないか」
「ありがとう、まつり」
「ちょっと待ってよ!」
決まりそうになった話に割って入ったのはかがみだった。
「私達で出来るわよ、お姉さんなんていらない!」
かがみからすれば、神社の手伝いは毎月やってるし、初詣だって何度も経験している決して初めてではない。
それなのにさっきから聞いていればまるで自分達を戦力外扱い、大いにプライドが傷つけられるというもんである。
「いらないって、かがみ一人でやったことないじゃん
いつも私達がいるから出来てるんだよ」
自分を不要扱いしたのが気に入らず、まつりはやや口調を荒げる。
もちろんそれは今のかがみは逆効果なのはいうまでもない。
「それはみんながやらせてくれなかっただけで、私達だって出来るわよ!! ねえつかさ!?」
「えっ!? ふえっ!?」
煌々と燃えているものをどう鎮火すれば良いか、いのりは母に、みきは夫にそれぞれ視線を送る。
採決権を譲られたただおだったが、別段困った様子も見せず、一つゆっくりと頷く。
「じゃあ明日はかがみとつかさに任せようかな、いずれは一人で手伝ってもらいたいし」
年齢的にはそこまで子供じゃないし、娘がやると言ってきているのだから、断ることもない。
ただおとしては娘が成長してくれているのは望ましいことだ。
「やったぁ! さすがお父さん!」
「う、うん、頑張るね」
期待と不安、同じ色の四つの瞳にはそれが入り交じっていた。