『明日への一歩』





 視界の隅っこで青い髪の女の子が手を振っているのが見えた。



 こなちゃんの家は、もう本当に数え切れないくらい何回も行ってる。

 でも今日は初めて車でこなちゃんの家に来たから、ちょっと迷いかけてたの



「さすがこなちゃん」

 わたしのことよく分かってる。

 わたしはブレーキを踏んで車を減速させた。



「おはよ〜」

「いや〜事故にあってないか心配したよ」

「えへへ、シンちゃんは?」

「ん、予定通り、大学に行ったよ」

 こなちゃんの言葉に頷くと、わたしは後部座席に乗っている大きなダンボールを取り出す。

 中身は、今日、彼氏さんであるシンちゃんと二人っきりのクリスマスパーティに使う食材。

 もちろんシンちゃんには内緒



「わたしもそろそろ大学に行くけど、ゆーちゃんはみなみちゃん家だし、

お父さんは編集さんと打ち合わせだし、家の中のは好きに使ってくれていいよ〜」

「ごめんね、こなちゃん」

 今回のわたしのわがままな思いつきはこなちゃんの協力があってこそ

 しかもこなちゃんの家なのに、こなちゃんたちを追い出すみたいになっちゃって………



 すごく申し訳ない



「いやいや、うちは明日パーティだしね

 それにさ」

 こなちゃんはそこで言葉を切ってわたしの肩に手をのっけてきた。



「つかさとシン、私なりに見守ってるつもりだよ」

「……こなちゃん」

「生暖かくね」

 こなちゃんの絶妙なタイミングでの落としに、わたしは思わずよろける。

 そんなわたしを宣言通り生暖かい視線で見てくるこなちゃん。



 でもね本当にありがとう



 いっつも、こなちゃんたちには助けてもらってるから

 こうやってシンちゃんと仲良く出来てるんだよ



「ところでさーつかさ」

「なーに?」

 ダンボールを運ぶのを手伝ってくれながら、こなちゃんが聞いてくる。

 こなちゃんは見た目が小さくて可愛いんだけど、わたしなんかより全然力があるんだよ



「車、どこに止めるの? 家もう止めるとこないよ」

「えっ? ………」

 こなちゃんの言葉にわたしは思わずダンボールを落っことしそうになる。



 結局調理を始めれたのは、予定よりもかなり遅れてからだったの





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